韓国の縫製工場はどこも同じではない!!! 東大門の卸売向け工場とブランド(輸出)向け工場の違い!!!
縫製工場というと、どこも似たようなものに見えるかもしれませんが、実際はまったく違います。
工場によって普段取引している相手が違い、それによって仕事の進め方、縫製のクオリティ、生産スピード、最低生産数量、工賃までかなり差があります。
実際の生産現場では、単純に工場の技術不足で問題が起きることもありますが、工場が慣れている生産方法と、ブランド側が求めている生産方法が合わないことでトラブルになるケースも少なくありません。
思ったより生産スピードが遅くて納期に間に合わなかったり、縫製のクオリティが基準に届かず、ひどい場合には生地や付属を再発注して、別の工場で作り直さなければならないこともあります。
だからといって、どの工場が「良い」「悪い」と単純に分けられるものでもありません。
大切なのは、自分が作ろうとしている商品のクオリティや生産方法に合った工場を探すことです。
今回は韓国の縫製工場を大きく分けて、東大門の卸売市場の商品を主に作っている工場と、ブランドや輸出向けの商品を生産している工場では何が違うのか、現場での経験をもとにお話ししてみようと思います。
1.東大門の卸売市場の商品を主に生産する縫製工場

以前に比べると規模はかなり小さくなりましたが、韓国には東大門という巨大なアパレル卸売市場があります。
東大門の商品を主に生産する縫製工場は、東大門から近い昌信洞(チャンシンドン)、新設洞(シンソルドン)、万里洞(マンリドン)など、ソウル市内のいろいろな場所にあります。
こうした工場の大きな特徴は、比較的小規模で、小ロット生産に慣れていて、対応が早いことです。
●「社長さん、ミシン何台くらい動いてますか?」

布帛の縫製工場では、いわゆる「1対1」の縫製方式がよく使われています。
縫製スタッフ1人と補助スタッフ1人がペアになって、ミシン1台を担当するような形です。
東大門の卸売向け縫製工場では、これを「ミシン1台が回っている」というような言い方をよくします。
縫製スタッフ2人に対して補助スタッフが1人なら、「1台半」という言い方をすることもあります。
そのため、初めて訪問する布帛の縫製工場で、
「社長さん、ここはミシン何台くらい動いてますか?」
と聞くと、
「2台半くらいです」
「4台回ってますよ」
といった答えが返ってきます。
ミシンの台数を聞くのは、単純に工場が大きいか小さいかを知るためだけではありません。
生産現場を長く見ている人なら、本縫い、オーバーロック、三本針などの設備や実際の作業人数を見ることで、正確ではなくてもある程度の生産量を予想できます。
「生地と付属を入れて、裁断して、外注加工に出して、それから縫製に入ったら……だいたい何日くらいで終わりそうだな」
という感じで、頭の中でおおよその生産スケジュールを計算するわけです。
小ロットならそれほど大きな問題にはなりませんが、1,000枚以上のまとまった数量を生産する場合、1日にどのくらい生産できるのかを予測することは納期に直結するので、とても重要です。
「そんなことまで分かるの?」
と思う方もいるかもしれません。
でも、特定のブランドの商品を継続して生産していると、デザインや縫製仕様にもある程度共通するパターンが出てきます。
そのため、正確な数字までは分からなくても、作業人数や設備を見れば1日にどのくらい生産できそうか、ある程度は予測できるようになります。
● 20~30枚から始まる東大門の「反応生産」

東大門の卸売市場と取引している工場では、卸売店のシーズン前のサンプル作りから、商品化された後の本生産まで行います。
ただし、最初の生産数量はかなり少ないです。
これは少し昔の話になりますが、私の記憶では1型20~30枚くらいから生産してくれる工場も多くありました。
初めて聞くと、
「20枚、30枚だけ作って工場の採算が合うの?」
と思うかもしれません。
でも、東大門の生産システムを知ると、その理由が分かります。
卸売店に並んでいる商品がすべて売れるわけではありません。
まずいろいろなデザインを少量ずつ作って市場の反応を見て、その中から反応の良かった商品だけをシーズン中ずっと追加生産していきます。
例えば、
20枚生産
↓
販売して反応を見る
↓
売れる
↓
30~40枚追加生産
↓
また売れる
↓
100枚~追加生産
↓
シーズン中、繰り返し生産
といった感じです。
商品が大ヒットすると、売れている数型だけでそのシーズンの売上のかなりの部分を作ることもあります。
この場合、卸売店は東大門の生地屋から生地を確保し、毎日のように縫製工場へ投入します。
縫製工場は入ってきた生地の数量に合わせて裁断・生産し、出来上がった商品から順番に卸売店へ納品していきます。
そのため、東大門の生産では一般的なブランド生産と比べると、「納期」という考え方も少し違います。
例えば、
「○月○日までに500枚をまとめて納品する」
というよりも、
売れている商品を、必要な数量だけ継続して作って市場に供給していく
という反応生産に近いスタイルです。
一般的なブランド生産に比べると、最初から最終納期と総生産数量をきっちり決めて生産するという考え方は比較的弱くなります。
生地が入ってきたらその分を裁断して、生産できた数量をその都度卸売店へ納品する。
そういう仕事が多いため、毎日きちんと生産して商品を上げていけば、取引先から信頼を得やすい仕組みでもあります。
一方、このような工場に、細かな指示や頻繁な修正・確認作業、厳密な納期管理が必要になる輸出ブランドの商品を依頼すると、工場側にとっては慣れていない仕事の進め方なので、かなりストレスになることがあります。
工場からすると、いろいろなデザインを次々と生産するよりも、よく売れている1~2型をシーズン中ずっと繰り返し作るほうが、作業者もその商品の縫製に慣れていきます。
自然と生産性も上がり、利益も出しやすくなるので、こうした生産方法を好む工場も多いです。
最初は20~30枚という小ロットでも、追加生産が何度も続けば、工場側も自然と採算を合わせられる仕組みになっています。
● では、東大門の工場はブランド生産には向いていない?

必ずしもそうではありません。
東大門の縫製工場が悪いという話ではありません。
ただ、生産方法と仕事の優先順位が違うということです。
東大門の生産では、少ない数量を素早く作り、市場の反応に合わせて追加生産を繰り返す対応力が重要です。
一方、ブランドや輸出向けの生産では、決められた品質基準や生産仕様を守りながら、一定数量を決められた納期までに完成させることが求められます。
特に生産数量が多くなればなるほど、1対1方式の縫製では生産スピードの面で不利になることもあります。
そのため、輸出会社やブランド生産に慣れている担当者が、初めて東大門スタイルの工場と仕事をすると、お互いの考え方や生産方法の違いから、うまくいかないことがあります。
逆に、生産数量が非常に少なく、スピーディーな対応を重視する韓国国内の小規模ブランドなら、東大門の工場の生産スタイルが合う場合もあります。
結局大切なのは、
「東大門の工場か、ブランド向けの工場か」ではなく、自分が求めている生産方法と合っているかどうか
だと思います。
ただし、この反応生産の仕組みは韓国国内のブランドなら活用しやすいのですが、日本ブランドが韓国で生産する場合には、現実的に難しいケースが多くなります。
商品を少量ずつ何度も分けて日本へ輸出すると、そのたびに輸出書類や出荷業務が発生します。
さらに韓国から日本までの国際運賃もかかるため、小ロット追加生産のメリットよりも物流コストや業務負担のほうが大きくなってしまうことがあります。
そのため、日本ブランドが韓国で生産する場合は、ある程度まとまった数量を生産して、一度に出荷する方法のほうが現実的です。
2.輸出・ブランド商品を主に生産する縫製工場

以前の韓国には、輸出向けの商品や大手ブランドの商品を生産する比較的規模の大きな縫製工場がたくさんありました。
しかし、価格競争力を失ったことで多くの工場が廃業したり、生産拠点を海外へ移したりして、現在韓国に残っている工場も以前と比べるとかなり小規模になっています。
現在、ソウルの縫製工場は中心部から少し離れた地域や、昔からある住宅街の周辺などに多くあります。
これはあくまで私が現場を回ってきた中での印象ですが、カットソー系の縫製工場は中浪区(チュンナング)周辺でよく見かけました。
布帛の縫製工場は、水踰(スユ)、弥阿(ミア)、樊洞(ポンドン)や禿山洞(トクサンドン)などでよく見かけた記憶があります。
もちろん、地域だけで工場の特徴や実力を判断することはできません。
●「有名ブランドを生産していた工場です」という言葉だけを信じない
初めて工場を探していると、よくこんな話を聞きます。
「ここは○○ブランドをやっていた工場ですよ」
「日本向けの輸出をたくさんやっていた工場ですよ」
もちろん、工場を判断するための参考にはなります。
ただ、それだけで自分が作ろうとしている商品の品質まで判断してはいけません。
同じブランドの商品でも、アイテムや価格帯によって求められる縫製レベルは違います。
また、そのブランドの商品を生産していたのがいつなのか、当時実際に縫っていたスタッフが今も同じ工場にいるのかも分かりません。
だから私は、初めて訪問する工場では、その工場に残っている現在の生産商品を実際に見せてもらうことが大切だと思っています。
1枚、2枚だけではなく、できれば何枚か選んで見てみることをおすすめします。
● 服は表だけではなく、裏返して見てみよう!

商品を確認するとき、作業台の上に広げて表側だけを見るのではなく、できれば服を裏返してみてください。
縫い代はどのように処理されているのか。
縫い目は安定しているか。
オーバーロックの状態はどうか。
細かな始末はどのくらいのレベルなのか。
実際に自分の目で確認することが大切です。
重要なのは、その工場の縫製が客観的に「良い」「悪い」と評価することではありません。
自分が生産しようとしている商品に必要なレベルを満たしているかどうかを見ることです。
初めて会う工場やメーカーで、商品をあまり細かくチェックすると失礼なのではないか、と心配する担当者もいます。
でも、私はそうは思いません。
むしろ生産や品質をきちんと確認する担当者だという印象を持ってもらったほうが、本生産に入ったときにも生産側が少し気を使ってくれることがあります。
逆に、過去の生産品や現在作っている商品を確認されることを極端に嫌がったり、不快そうにしたりする生産者であれば、私は取引を少し慎重に考えるようにしています。
3.縫製のクオリティに絶対的な基準はない!

アパレル生産を長くやっていると、「良い縫製」という言葉が実はかなり曖昧な表現だということが分かってきます。
人によって重視するポイントが違うからです。
私から見れば十分きれいに縫えている商品でも、あるブランドにとっては物足りないかもしれません。
逆に、商品によっては必要以上に高い縫製レベルを求める必要がない場合もあります。
商品の販売価格も違えば、ブランドが求める品質レベルも違います。
結局、大切なのはとにかく最高レベルの工場を探すことではありません。
そのブランドが求める品質レベルに合った工場を探すことです。
そのためにも、実際の商品を自分の目で見て確認することが必要だと思います。
4.「安くて上手な工場」はある?

アパレル市場には、安い商品を求める需要もあれば、ある程度高い品質を求める需要もあります。
もちろん、どちらの市場も必要です。
縫製工賃についても、単純に「高い」「安い」だけで判断することはできません。
どんな生産方法なのか。
何枚作るのか。
どのくらい複雑な商品なのか。
どの程度の品質を求めるのか。
こうした条件によって工賃は変わってきます。
だから工場を探すときに、意外と気をつけたほうがいいのが、
「安くて上手な工場」
という漠然とした基準かもしれません。
価格は安い。
品質は良い。
小ロットでも受けてくれる。
納期も早い。
しかも細かな要求にも全部対応してくれる。
もちろん、そんな工場があれば誰だって取引したいですよね。
でも現実には、すべての条件を同時に満たすのはなかなか難しいものです。
自分が作ろうとしている商品の価格・品質・数量・納期の中で何を重視するのかをまず決めて、それに合った工場を探すことが現実的だと思います。
明確な基準を持たず、漠然と「安くて上手な工場」だけを探し続けていると、良い工場に出会うどころか、縫製工場に対する悪いイメージばかりが残ってしまうかもしれません。
結局、「良い工場」とは誰にとっても良い工場なのではなく、
自分が作りたい商品と、自分たちの仕事の進め方に合っている工場
なのだと思います。
韓国でのアパレル生産について、工場選びや生産方法でお悩みの場合はお気軽にご相談ください。
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