韓国生産と中国生産、どちらを選ぶ? アパレル生産地を決めるときの判断基準 【中国生産編】
前回は韓国生産についてお話ししました。
今回は、「どんな商品なら中国で生産した方がいいのか?」についてお話ししてみたいと思います。
まず、中国のアパレル製造業は以前と比べるとかなり規模が小さくなりました。
正確な統計までは分かりませんが、私が約20年前に初めて中国へ行った時に見た縫製工場の規模と、現在の縫製工場の規模を比べると、かなり大きな違いを感じます。
だからといって、中国生産の競争力がなくなったという意味ではありません。
むしろ、他の国ではなかなか真似できない、中国ならではの強みが今でもはっきりとあります。
今回は、私が実際に生産をしながら、どんな商品を韓国で作り、どんな商品を中国で作っているのか、その判断基準について説明してみたいと思います。
1.縫製難易度が高く、専門的な人材や設備が必要な商品

私はコートやダウンジャケットのように、縫製難易度が高く、多くの工程や専門的な設備が必要な商品は、中国で生産することが多いです。
前回の韓国生産編でもお話ししましたが、韓国は小規模な縫製工場が多いため、素早い対応や小ロット生産には強みがあります。
その一方で、多くの人手や専門設備が必要な商品になると、どうしても限界があります。
中国には今でも、コートやダウンジャケットなど特定のアイテムを長年専門的に生産してきた工場や、経験豊富な職人、専門的な生産設備が多く残っています。
以前は、こうした中国の工場に100~300枚程度の小ロット生産を依頼するのは簡単ではありませんでした。
製造業では小ロットになるほど生産効率が落ちるため、大量生産を中心にしていた工場にとって、小さなオーダーはあまり魅力的ではなかったからです。
しかし、中国で生産していた大手バイヤーが、より安い製造コストを求めて東南アジアなどへ生産拠点を移すようになり、中国の縫製産業も大きく変わりました。
多くの工場が閉鎖したり規模を縮小したりして、残った工場も以前のように大量オーダーだけを待っていることが難しくなりました。
その中で、小ロット生産に対応する工場も増えてきました。
工場の規模や働く人の数は以前より小さくなりましたが、中国が長年アパレル製品を生産する中で積み重ねてきた、熟練した人材や専門設備、生産システムまでなくなったわけではありません。
その結果、中小規模のアパレルブランドにとっては、以前ならなかなか利用できなかった中国の専門縫製工場に、比較的小さなロットからでも生産を依頼できる環境になってきたと思います。
そのため私は、コートやダウンジャケットのように、単純に縫製工賃だけでは判断できない商品ほど、中国生産を積極的に検討します。
こうした商品は、単純に人件費の安い国で作ることよりも、その商品を長年作ってきた専門工場があるか、経験豊富な人材がいるか、そして必要な設備が揃っているかということの方が、ずっと重要だからです。
2.中国の生地・付属を使った方が、価格と品質のバランスが良い商品

韓国で生産することが、逆にあまり効率的ではない商品もあります。
ただし、ここでは布帛製品に限ってお話しします。
納品まである程度時間に余裕があり、中国でもそれほど難しくなく手配できる生地や付属を使う商品。
そして縫製そのものはそれほど難しくなくても、1枚を作るのにある程度作業時間がかかる商品。
こうした商品は、中国で生産した方が価格と品質の両方で明らかにメリットが出る場合があります。
アパレル製品の製造原価の中で大きな割合を占めるのは、1枚に使用する生地の価格と、縫製にかかる人件費です。
中国で生地や付属を手配し、そのまま中国で縫製すれば、この2つのコストを抑えることができます。
そのため商品によっては、お客様にとってかなり魅力的な生産価格になることがあります。

以前は、中国の生地や付属について品質や信頼性を心配する方も多かったと思います。
ただ、私が実際に生産をしながら感じるのは、中国の生地や付属も以前と比べてかなり良くなったということです。
もちろん、今でもサンプルを作っている途中で、
「この付属は少し心配だな」
と思うことはたまにあります。
そういう時は無理に中国製のものを使わず、韓国ですでに品質を確認している付属を中国へ送って使用することもあります。
韓国生産から中国生産へ切り替える場合
私が実際に韓国で生産していた商品を、
「次からは中国生産に切り替えてみませんか?」
とお客様に提案することもあります。
代表的なのが、韓国で生産した商品がよく売れて、追加オーダーが繰り返し入るようになった場合です。
最初は数量がそれほど多くないので韓国で素早く生産します。
しかし、商品が売れて追加生産が繰り返され、ある程度数量が安定してくると状況が変わります。
この時、中国で韓国で使用していたものと同じ、または近い品質の生地を見つけることができれば、中国生産へ切り替えることで製造原価をかなり下げられる商品があります。
もちろん、単純に価格が安いという理由だけで生産国を変えるわけではありません。
韓国で使用していた生地と近い品質のものを中国で確保できること、納期にも十分な余裕があること、そして中国生産へ切り替えることで実際に意味のあるコストダウンができること。
こうした条件が揃った場合に、中国生産への切り替えをおすすめしています。
最初からすべての商品を中国で作らなければならないわけでもありませんし、
ずっと韓国で作り続けなければならないわけでもありません。
販売初期は韓国のスピードを活かして生産し、販売が安定して追加生産が続くようになった段階で中国生産へ切り替える。
これも、私が韓国生産と中国生産を使い分ける方法の一つです。
3.韓国の生地・付属を使いながら、生産コストを調整したい場合

中国の生地ではなく、韓国の生地や付属を使って商品を作りたい。
発注数量もある程度あるけれど、韓国ですべて生産すると価格が少し高くなってしまう。
こういう場合には、韓国で生地や付属を準備して、中国へ送り、縫製を中国で行う方法もあります。
ただ、中国で縫製すれば必ず安くなるというわけではありません。
前回の韓国生産編でもお話ししましたが、縫製が単純な商品や小ロット生産の場合、韓国生産と比べてもそれほど価格差が出ないことがあります。
韓国から中国へ生地や付属を送る必要がありますし、生産を進めている途中でも、サンプルや付属などの小口荷物を国際宅配便で何度かやり取りすると、思っている以上に運送費がかかるからです。
そのため中国生産の価格を比較する時には、韓国と中国の縫製工賃だけを比べてはいけません。
韓国の生地や付属を中国まで送る運送費や、生産途中に発生する国際宅配便の費用まで含めたトータルの生産コストで考える必要があります。
そのため小ロット生産の場合は、1型だけを単独で中国生産するよりも、複数の型をまとめて生産することも、運送費を抑える方法の一つです。
韓国の生地や付属を使って中国で生産する方法は、ある程度の数量がある場合や、複数の型を一緒に進めて物流コストを分散できる場合に、価格面でのメリットが大きくなります。
4.靴やバッグなど、韓国では生産インフラを探すのが難しい商品

靴やブーツ、レディースバッグなど、韓国では生産インフラを探すのが難しい商品もあります。
中国には、靴やレディースバッグに使われる素材や付属を専門的に扱う市場や、
それらの商品を専門的に生産している地域があります。
こうした場所では、すでに流通している既製の素材や付属を活用できるため、
商品によっては200~300個程度の比較的小さなロットから生産できる場合もあります。
靴やバッグは、私の専門分野ではありません。
ただ、中国にはこうした商品を専門的に生産しながら、小ロットにも対応できる工場があります。
私たちの場合は、知人の紹介などを通して知り合った、信頼できる専門工場へ生産を依頼しています。
生産の進め方は、アパレル製品と大きく変わりません。
サンプルを作り、品質や仕様を確認してから価格と納期を決め、本生産へ進みます。

結局大切なのは「どこで作るか」より「どう作るか」
ここまで、私がどのような場合に中国生産を選んでいるのかについてお話ししてきました。
中国生産と聞くと、今でも最初に思い浮かぶメリットは「生産価格が安いこと」ではないでしょうか。
もちろん、価格は中国生産を選ぶ大きな理由の一つです。
ただ、私が実際に韓国と中国の両方で生産をしながら感じている中国の大きな強みは、
単純に人件費が安いことだけではありません。
長年さまざまな製品を作り続けてきたことで形成された専門的な生産地域、豊富な生地・
付属市場、経験豊富な人材と生産設備、そして商品によってさまざまな選択ができる幅広い生産インフラ。
これらが中国生産の大きな競争力だと思っています。
反対に、すべての商品を中国で生産すれば安くなるわけでもありません。
小ロットでシンプルな商品なら、韓国で生産した方が早くて効率的なこともあります。
また、韓国の生地の特徴を活かしたい商品なら、韓国でそのまま生産した方が良い場合もあります。
だから私は、最初から生産国を決めて商品を当てはめるのではなく、
どんな商品なのか。
どんな生地や付属を使うのか。
数量はどのくらいなのか。
どの程度の品質を求めているのか。
そして納期までどのくらい時間があるのか。
こうした条件を見ながら生産地を決めています。
場合によっては、最初は韓国で生産して、販売が安定して数量が増えてから中国生産へ切り替えることもあります。
また、韓国の生地や付属を中国へ送り、中国で縫製することもあります。
結局、韓国生産と中国生産は、どちらか一方が優れていて、もう一方が劣っているというものではありません。
商品や状況に合わせて使い分ける、異なる生産方法だと私は考えています。
私たちに生産のお問い合わせをいただいた場合も、最初から韓国生産や中国生産のどちらかをおすすめするのではなく、商品の特徴、数量、価格、品質、納期などを見ながら、どちらで生産するのがより合理的なのかを考えるようにしています。
私が考える海外生産で一番大切なことは、
一番安い国で作ることではなく、その商品に一番合った生産方法を見つけることです。
韓国生産についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
→ 韓国生産と中国生産、どちらを選ぶ?【韓国生産編】