アパレル生産の納期は、 なぜ予定通りにいかないことがあるの?
アパレルの生産に携わっていると、いろいろな理由で納期がずれてしまうことがあります。
生地や付属の決定、縫製仕様の細かい部分がなかなか決まらず、サンプルの段階から遅れてしまったり、
発注した生地や付属の工場入荷が遅れて、生産スケジュールそのものが後ろにずれてしまったり。
実際、縫製の現場では外から見ている以上にいろいろな問題が起こります。
そして、その問題を一つずつ解決していくのも日々の仕事だったりします。
納期がずれる理由はいろいろありますが、
今回はその中でも実際の生産現場でよくある、
「サンプルや縫製仕様の最終確認が遅れた場合」
についてお話ししてみようと思います。
1.縫製工場は、自分の商品だけを作っているわけではない

この一言で、ほとんど説明できるかもしれません。
依頼する側からすると、どうしても自分の商品を中心に考えてしまいます。
でも工場では、同時にほかのブランドの商品も生産していて、それぞれ約束した納期に合わせて生産スケジュールが組まれています。
もし一つのスタイルでも予定していた日程からずれてしまうと、その後に予定されている商品にも影響が出てしまいます。
そうなると、全体の生産スケジュールを調整し直さなければなりません。
2.最終決定が2〜3日遅れたからといって、納期も2〜3日だけ遅れるわけではない

[生産スケジュール表]
上のスケジュール表は、A・B・Cの3ラインを稼働している縫製工場を想定して、僕が例として作ってみた8月の生産スケジュールです。
8月1日から月末まで、こんな感じで生産予定が入っているとします。
ここで、自分の商品の生産予定が
「Bライン・8月1日〜3日のシャツ」だったとしましょう。
通常であれば、その前の週までに生地や付属が工場に入荷し、縫製仕様についても最終決定しておくのが理想です。
遅くとも7月最後の営業日の午前中くらいまでには、最終確認を終わらせておきたいところです。
そうすれば工場側も事前に縫製工程を確認して、
Bラインの作業者に縫い方や注意点を共有したり、
本番の生地に合わせてミシンの糸や糸調子を調整したりと、生産に入るための準備ができます。
では、もし生産開始日になっても最終決定ができていなかったら……?
工場としては、そのままラインを止めて待つわけにはいきません。
後ろに予定されている商品の中から、すぐに生産を始められるものを前に持ってきて、
先に作り始めることになります。
ラインを止めてしまえば、その日数分だけ工場には損失が出ますし、
その後に予定されている商品の納期まで遅れてしまう可能性があるからです。
たとえば、代わりに先に入れた商品の縫製に7日ほどかかるとします。
そうすると、
最終決定が2〜3日遅れただけでも、自分の商品の納期は6〜7日ほど遅れてしまう
ということも十分あり得ます。
3.じゃあ、決まった時点で元のスケジュールに戻せばいいんじゃない?

と思うかもしれません。
でも、これも現実的にはなかなか難しいです。
縫製は最初のセッティングも大切ですが、作業者が同じ工程を繰り返すうちに作業に慣れて、生産スピードも少しずつ上がっていきます。
実際、初日と数日後では生産量に思った以上の差が出ることもあります。
工場の生産スケジュールは、こうした作業効率の変化もある程度考えたうえで組まれています。
そのため、せっかく流れに乗っている作業を途中で止めて、元々予定していた商品を急に入れてしまうと、生産効率が落ちてしまいます。
その結果、一つの商品だけではなく、工場全体の納期が連鎖的に遅れてまうこともあります。
また、いくつものスタイルを途中で入れ替えながら生産すると、作業指示や生地・付属の管理も複雑になります。
付属の紛失や作業ミスが起きやすくなったり、場合によっては商品の品質低下につながる可能性もあります。
結局、すでにラインに入っている商品の生産が終わってから、
空いているところを探して、もう一度スケジュールを組み直して生産することになります。
もちろん工場側も、お客様の事情を考えながら、できるだけ納期が遅れないように、
少しでも早く生産できる方法を探します。
ただ、すでにいろいろな商品の生産予定がつながっているので、
思ったほど簡単ではないことも多いです。

4.納期は「縫製にかかる日数」だけではありません
アパレル生産でいう「納期」は、単純に縫製に必要な日数だけで決まるものではありません。
生地や付属の入荷、サンプル確認、縫製仕様の決定、生産前の準備、そして実際の縫製。
こうしたいろいろな工程とスケジュールがつながって、最終的な納期が決まります。
特に、すでに工場の生産スケジュールが埋まっている場合、
最終決定が数日遅れたからといって、納期も同じ日数だけ遅れるとは限りません。
場合によっては、次に予定されていた商品が先に生産に入ることで、
思っていた以上に納期がずれてしまうこともあります。
なので、生産を依頼する側としては、
工場からお願いされた「最終確認の日」を単なる余裕を持たせた日程と考えるのではなく、
全体の生産スケジュールを守るために必要な日程として考えてもらえるといいかなと思います。